コロナウイルス大流行により、テレワークで自宅作業を余儀なくされている方は多いと思います。
そんな中、自宅のプライベートPCと仕事用PCを併用している人も結構いるのではないでしょうか。YouTubeはプライベートPCで、リモート会議は仕事用PCで、みたいな。
その際に Bluetoothデバイスの切り替えを頻繁に行いますよね。
Bluetoothデバイスって、最近利用頻度の多いヘッドセットやヘッドホン、マイクはもちろん、キーボードやマウス、スピーカーなど、使いどころが沢山あって便利ですよね。
しかし、複数台のPCで Bluetoothデバイスの接続を切り替えるのが段々面倒くさく感じてくるはずです。
その中で、ヘッドホン切替は頻度は高いはずです。
このヘッドホン切替の手間は無料で無くせることがわかりました。
そこで、このBluetoothヘッドホンの切替の手間を無くす方法について、ご紹介します。
VoiceMeeter Banana
今回、こちらのソフトウェアミキサー VoiceMeeter Banana を活用します。
とにかく高機能なミキサーソフトウェアで、ハードウェアリソースに余裕があるなら、ハードウェアミキサー並みに機能が豊富です。
しかも、USB接続のマイクとオーディオインターフェースのマイクを両用できたり、PC内でループバックを回したりなど、ハードウェアミキサーでは簡単にはできないことが実現できるのが利点です。
この VoiceMeeter Banana の基本的な使い方は、他サイトの下記の記事をご覧いただく良いと思います。

基本的には、VoiceMeter Banana をオススメします。起動した画面はコチラ。

マイクデバイスが3入力、仮想入力(デスクトップ)が2入力、デバイス出力3系統、仮想出力が2系統あって、大抵のことはなんとかなります。ボイスチェンジャーアプリとか使う場合には必須になります。
下位版のVoiceMeeterだと、少し操作画面が小さいと思いますのでご注意ください。

マイクとデスクトップ音声の入力をミックスするくらいはできますが、シンプルすぎて、それ以上はしないと割り切る必要があります。
また、上位版VoiceMeeter Potate でも同じことは実現できます。

ただ、より操作画面が複雑になるのでご注意ください。
こちらであれば、アプリケーション毎に音声を調整したり、エフェクト適用や入出力毎の細かい調整が可能です。ここまでやりたいとなるとプロユースになってくると思いますが、ここまでくるとハードウェアミキサー買った方が良いのでは?と思ったりもします。
ただ、見るより触らないと分かりにくいのがこの手のソフトウェアの特徴です。
ぜひとも実際に試して、慣れてくださいね。
なお、ドネーションウェアなので、基本的には無料です。ただ、彼らの開発が今後も継続されることを願って、ぜひ寄付してあげましょう。ハードウェアを購入するより、絶対に安いですからね!(匠は寄付しました)
VBANとは
VoiceMeeter / VoiceMeeter Banana / VoiceMeeter Potate いずれのバージョンにも実装されている、オーディオネットワーク機能です。
上記ページのこちらのイメージが分かり易いです。

要は、VoiceMeeter/VBAN Receptor といった関連アプリケーション内で、音声を共有できるという夢のような仕組みです。
仕組み的には、インターネット経由でもやれる!みたいな記載がされていますが、実のところレイテンシー(遅延)問題があるので、難しいと感じています。
とはいえ、上手く使えば家庭内のPC間の音声入出力を1台に集約できるという優れものです。
VBAN設定の概要
あまり日本語情報がないため、少し概要を解説したいと思います。
画面構成
下記の通り、1画面で入力も出力も扱うことができます。画面は VoiceMeeter のものですが、VoiceMeeter Banana / VoiceMeeter Potate でも同じで、チャンネル数が多くなるだけです。

基本的には、左上のVBAN全体のON/OFFボタン、中段の入力設定(受信設定)、下段の出力設定を利用します。
右上のボタンで、設定を保存したり、読み込んだり、リセットしたりもできます。
また、下の設定を見ると分かりますが、各設定を1対1で行う必要がある点をご理解ください。
入力設定(受信)

1行で1つの入力設定(受信)を調整します。
- ON/OFF ボタンで受信の開始/停止をコントロールします。
- ストリーム名は、配信側と受信側で同じ名前を設定します。
- 転送元IPは、転送元のIPアドレスで設定します。
- 転送速度(品質)も、配信側と受信側で合わせた方が無難。ただ、Fast が使えるなら使った方が高音質で聴けるが、無理するとノイズが出てしまいます。
- 入力先チャンネルは、受信した音声をどのチャンネル(入力デバイス)としてミックスするかを選択します。
意外と設定項目がありますし、環境によって異なるので慣れが必要ですね。
ちなみに、通信ポートは家庭/社内なら変更する必要は無いでしょうが、ファイアウォール問題あるときだけ変更するんでしょうね。通常は必要ないはずです。
出力設定(配信)

こちらも1行で1つの出力設定(配信)を調整します。
- ON/OFF ボタンで配信の開始/停止をコントロールします。
- 転送対象のチャンネルでは、どの出力チャンネル(出力デバイス)の音声を配信するかを選択します。
- ストリーム名は、配信側と受信側で同じ名前を設定します。
- 転送先IPもIPアドレスで設定します。
- 転送速度(品質)も、配信側と受信側で合わせた方が無難。
こちらも設定項目がいくつかありますし、環境によって異なるので慣れが必要です。
注意事項
下記は、実際によくやってしまう失敗や注意点です。
- VBAN全体をONにした上で、受信や配信の各行でON/OFFを調整する。つまり、全体と各行の両方ONにしないと受信/配信できない。
- 転送側と送信側でストリーム名は必ず合わせる必要がある。転送速度(品質)も合わせた方が良さそう。
- レイテンシーやノイズは回線速度次第なので、回線速度がかなり重要。
やってみると分かりますが、けっこう何度もミスするポイントです。(=もう何度もミスした(汗))
VBANで音声を1台に集約する方法
こちらでは、1台のPCに他のPCの音声を集約する方法を紹介します。
構成イメージ

単純には、こんなイメージです。
設定手順
今回は、下記の設定値を前提とします。
使用ソフトウェア | VoiceMeter Banana |
配信側PC | 170.0.0.4 |
受信側PC | 170.0.0.1 |
ストリーム名 | Stream1 |
通信ポート | 6980(デフォルト) |
サンプリングレート | 48000 Hz(デフォルト) |
チャンネル | 2(デフォルト) |
品質 | Optimal |
配信元チャンネル | BUS A1 |
配信先チャンネル | Virtual in #2 (VoiceMeeter Input) |
1. 配信側の設定

設定値通りに、1行に左から入力します。設定した後、うまく接続できれば IPアドレスの横に緑ランプが点灯します。点灯していない場合は、どこかに設定漏れがあるはずです。
2.受信側の設定

こちらも設定値通りに、1行に左から入力します。
いちばん右の「Destination」は考慮する必要があります。
「Virtual In #1」を選ぶと、デスクトップで発生する効果音と混ざってしまいますので、音量や音質の調整を分けることができません。
そのため、「Virtual In #2」にして、この受信した音声だけ別で調整できるようにしておきます。
3. VBAN開始

あとは上記のボタンを押下して、配信を始めるだけですね。
補足
複数の配信側PCから受信可能
配信側PCは1台で無くて複数でも可能ですが、各行ごとに必ず1対1の設定が必要となります。
そのため、対象が増えれば増えるほど、上位版の VoiceMeter Banana や VoiceMeter Potate を利用する必要が出てきます。
ソフトウェア | 入出力ストリーム数 |
---|---|
VoiceMeter | 4 |
VoiceMeter Banana | 8 + 2 (MIDI & Command) |
VoiceMeter Potate | 8 + 2 (MIDI & Command) |
高速回線を推奨
リアルタイムで音声を配信するため、レイテンシー(遅延)やノイズの問題を解消するには、とにかく高速な回線が必要です。
LANといえど通常のWiFiでは心許なく、けっこう厳しいようでした。すぐにAMラジオみたいな音質になってしまっていました。
そのため、有線でLANを形成するか、下記のような機器でWiFi6で高速な無線環境を構築することをお薦めします。

VBAN提供サイトではインターネット経由でも…なんて書いてるんですけどね(汗)
iOSデバイスでの利用は厳しい
受信側を iPhone や iPad でも下記のアプリを使えば、利用できなくはありません。

ただ、実際に利用してみると分かりますが、iOS版は雑音が酷いです。
iPhone/iPadに音声出力を集約できれば更に便利だと思いますが、これをどう調整すれば解決できるのか、匠はまだ良い手立てが見つけられていません。
Linux/Mac でもVBANは利用できる
VoiceMeeterは、基本的には Windows のみでしか利用できません。
しかし、LinuxでもVBANを使ったデスクトップ音声の受信配信は可能です。
コンパイルさえ通るなら、恐らく Mac でも利用できるはずです。ただ、次のアプリを使った方がラクでしょうけどね。

セットアップ
下記の通りにセットアップします。なお、Gitなどコンパイルに必要なパッケージは自力で用意できる前提とします。
git clone https://github.com/quiniouben/vbanコンパイルに必要なパッケージ
cd vban
./autogen.sh
./configure
make
sudo make install
Linuxではおなじみですが、ソースコードからコンパイルしてインストールします。
うまくいけば次のパスにコマンドが無事インストールできます。
- /usr/local/bin/vban_emitter
- /usr/local/bin/vban_sendtext
- /usr/local/bin/vban_receptor
ちなみに、Ubuntu 20.04 LTS では何事なくインストールおよび利用可能でした。
使い方は、Readme もしくは ヘルプを確認してみてください。簡単です。
実際どう?
コマンドで一度接続してしまえば、非常に安定していて良いようでした。
これならLinux端末を受信専用にして、家庭内のPCからの音声を全て集約するのはアリだなと感じました。
ただ、配信に受信にもそれなりの負荷がかかるため、専用端末化して集約するメリットは無い気もしましたが。
PC+VBAN≒Bluetoothトランスミッター?
VBANを上手く使えば、PCに接続するBluetoothトランスミッターが不要になります。
何を言っているかというと、下記のBluetoothトランスミッターを利用していました。

こちらで光デジタル端子を自宅PCに、オーディオ端子を会社PCに接続して、スイッチで切り替えて利用していました。
この使い方だとスイッチで切り替える手間が発生していて、Windows OS上で切り替える方法より僅かに早いくらいしか利点がありませんでした。
しかし、VBANで切替の手間が不要になりました。
お陰で我が家で使っていた、このBluetoothトランスミッターが不要になってしまいました(汗
このBluetoothトランスミッターは、テレビに再利用しようと思います。
これはこれで良かった良かった。
なお、余談ですが、下記のようなハードウェアのオーディオミキサーで入力をまとめれば、今回のような作業は不要なんですけどね。マイクどうするか問題は残りますが。

最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。